大人の発達障害


私が大人の発達障害と初めて出会ったのは、クリニックに勤務していた時です。


大抵、うつ状態で職場に行けなくなったことがきっかけで来院されます。


お話を伺うと、ずいぶんさまざまな誤解を受けて、ご本人はすっかり自信を無くされている状態です。


手順としては、うつ状態で疲弊した心と身体を休めて、苦しい胸の内を吐き出していただき、少し落ち着いて元気が出てきたら、心理テストや、生育歴、現在困っている点などを詳しく伺い、総合的な判断をします。


発達障害の診断は簡単ではないのです。またグレーゾーンと言われたり、診断名がつかなくても明らかに特性を持っていらして、日常生活に困難さを感じていらっしゃるケースも多々あります。


大切なことは、診断名がつくことではありません。


まず、ご本人が、自分がどのような特性を持っているか、そのために辛い思いをしてきたこと、頑張っても理解されない点について自分自身をしっかり知ることです。


また、どんなに注意して努力しても、できないのが特性ですので、それをサポートする良い方策を見つけることが必要です。


ここまで自分でしっかりと理解することがまず最初です。


次に、職場の方々にも、この特性についてお知らせして、同じようにサポートの方法を伝える必要があります。


私は、患者様の特性が明確になったら、必ずその方の職場の上司宛に、わかりやすく特性について、またどのようなサポートが必要かなどをお伝えします。


実は、苦手な部分だけでなく、それとは反対に優れた部分もあるはずですので、そのことについてもお知らせします。


現在の部署が全く適していない場合は、その旨についても伝える必要があります。


職場の方々が理解するには時間と、協力が必要です。


ある男性の例をお話ししましょう。


彼は30代半ばで広告出版関係の仕事をしていました。


締切に追われる仕事で、彼はその締切の管理がとても苦手だったのです。


上司からは、「何度言えばわかるんだ!」「馬鹿にしているのか!」とまで言われて、流石に強靭な性格の彼も自分に自信が持てなくなってしまいました。


そもそも彼は、知的能力はとても高い人だったので、大学まで全く問題なくやり過ごしてきましたそうです。


しかし、大卒後、最も彼に適合しない自衛隊などに入ってしまい、規律の厳しい団体行動の訓練中に、自分には無理だと実感して辞めたのです。しかしそこで受けた傷つき体験は大きなものでした。


その後現在の職場に入社したのですが、やはり自分には不得意な部署で、先を見越して行動することや、計画通りに実施していくこと、一度にさまざまなことに気を配るなど、彼の手には負えないものでした。


このように大人になるまで、自分の特性を理解しないまま社会に出ると、しなくても良い傷つき体験を繰り返すことになります。


また、幼少期から親や先生など、周囲の大人から注意や叱咤など受けていることが多く、すでに自信を持てない状態であることも多くあります。


そのような経験から、人に指摘されたり、注意されると、「まただ!」と反射的に不機嫌な態度になったり、できないのに「できる」と言ってしまったりすることもあります。


このような特性を持つ人の気持ちを理解することは困難でしょうが、少し想像してみてください。


自分はいつも一生懸命ベストを尽くしているのに、どうして怒られるのか?


なぜ認めてもらえないのか?


訳もわからず人から嫌われたり、怒られたり、無視されたり、それは苦しいものです。


職場には、必ずこういう特性を持った方がいるはずです。


特性を持っているから、マイナーなのではなく、その特性を知り、カバーする方法も身につけて、堂々と自分らしくあれば良いのです。


言うは易しですが、その方法はありますので、一人で悩まず、またそういう方が側に居たら、ぜひ専門家を訪ねて、その方法を知ってください。



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