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戦争によるトラウマ



8月になると、終戦記念日を思う。


戦後78年を迎えるが、私たちの世代は、戦争についての体験がないどころか、戦争の恐ろしさを実感するような経験がない。


そのことが逆に恐ろしい、、、


私は、20代の時に沖縄で5年間過ごした。


初めて沖縄で生活を始めた時に、やることのない私は、図書館に行って、沖縄の歴史に関する本を読むことにした。


そこで手にしたのが沖縄戦である。


貪るように本を読み、その時代の自分達と同世代、あるいは若い学生たちの多くの人々が犠牲者になったことを知った。


そして、改めて、日本兵の残酷さ、現地の人の苦しさを知った。


地獄のような暑さの8月の最中、食物も水もなく、追い詰められた民間の人たちの多くが、岬から身を投げた。


それを想像するだけで、心が苦しくなった。


私の父は、母と27歳も年違いで、私からすれば祖父のような年齢の人だったが、父は幼少期に、戦争の体験の話や、関東大震災の生身の体験などを聞かせてくれた。



陸軍に派遣された父は、上等兵にこっぴどくしごかれる物語を、聞かせてくれたのだが、父は面白い人で、どんな過酷の環境も、彼なりにうまくやり過ごす手立てを持っていた。


今でも忘れられないのが、上等兵には逆らえないが、料理当番兵だった時に、上等兵の食べ物の中に、糞をわからない程度に混ぜ込んだらしい。


そうやって、微かな抵抗をしながら、復讐していたようだ。


幼い私は、戦争の恐ろしさは解らなかったが、父のコミカルな反撃がとても面白くて、痛快にかんじた。


母方の祖父は、大学の教授だったが、警察で当時、赤狩りという恐ろしい行為に、仕事を失い苦労したようだ。


今から考えれば、人間は全く馬鹿なことをするものだと思うのだが、歴史は繰り返される。


戦争を長く体験したある男性は、死ぬまで絶対に誰にも明かさない記録を、死ぬ前に妻に渡した。


縁あって、私はその記録を読ませていただいた。


そこには、赤裸々に食べ物がなくなった人間が、他の人間の肉を食べる姿や、戦いで精神錯乱状態になる人間の姿が記録されていた。


当時戦争経験者が、そういう記録を公表するのはもってのほかのことで、長く隠されていたが、のちの世代の人に、戦争の恐ろしさ、戦争は絶対に始めてはいけないことを、亡くなる前に伝えたかったようだ。


私は、戦争に行った母の再婚相手に、「本当に、こんな小さな日本が、大国アメリカに勝てると信じていましたか?」と聞いたことがある。


心から信じていたそうだ。


それが教育というものなのだろう。


本当に恐ろしい。


戦争体験者の妊婦を調べた報告がある。


子宮内環境を調べると、戦争体験からコルチゾール(ストレスホルモン)という物質が多量に放出され、子宮内の胎児が、高濃度のコルチゾールにさらされると、その赤ちゃんの体を調べると、コルチゾール値が低く、うつ、ストレス、PTSDのリスクが高いことが証明された。


また、遺伝子の働きの変化を起こすことも言われている。


このように、戦争体験がない子供も、母親が受けたトラウマを、世代を超えて受けてしまうことが考えられている。


戦争によるトラウマは、体験者だけでなく、世代を超えて連鎖するものだということを再認識する必要がある。


父が、よく、亡くなった戦友や友人が必ず会いに来ると話してくれたのも、彼が受けたトラウマの名残であるのかもしれない。




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