Somatic Experiencing ソマティックエクスペリエンシングとは

ートラウマを癒し回復力を高める、心と身体へのアプローチー


Somatic Experiencing(以下、SEと表記)は、米国のPeter A Levine博士によって開発 されたトラウマ治療の方法です。
Peter A Levine博士は、トラウマについて、従来とはまったく異なる見方を提案しまし た。トラウマは、伝統的に、心理学的、医学的な心の病として考えられてきました。
現在の心理療法と医療は、身体と心の関連性について、トラウマの癒しにおける心身の深 いつながりについては、過少評価しています。
そもそも何千年もの間、東洋とシャーマンの癒し手達は、身体心理的な医術の中で、心が 身体に影響を与えるだけでなく、いかに身体のすべての臓器システムが心の動きを表現し ているかに気づいていました。
心理学者であると共に神経生理学者でもある彼は、以下の2点からトラウマの成り立ちについて考察しました。


(1)野生動物は日常的に捕食動物からの攻撃にさらされているのに、人間のようなトラ ウマを受けて苦しむ事がない。


(2)トラウマの原因に関わらず、トラウマによって人間が苦しむ症状はほぼ同じである (不眠、フラッシュバック、パニック

   障害など)。


 これらの点から研究を進めた結果、Levine博士は、トラウマは個々の出来事の問題ではな く、それらの出来事に対して神経系がいかに反応するかという問題である、という結論を 導き出しました。
身体感覚に注意を向けることにより、私たちが本来持っている自己治癒力を引きだし、症状の癒しをはかります。

「ソマティック」は「身体の」、「エクスペリエンシング」は「経験」という意味ですから、「ソマティック・エクスペリエンシング」を直訳すると「身体の経験」となります。 言いづらい長い名前ですので、「SE(エスイー)」と略して呼ば れることもあります。

 このセラピーは、無理に症状や状態を変えようとするのではなく、 クライエントさんの身体が進める自然で本能的なプロセスに従うものです。そのため、非常に効果が高いにもかかわらず、副作用が少ないことが特徴です。 また、理性で変化を起こそうとするのではなく、本能的な回復力を活用するのも特徴です。つまり、分析したり、考え方を変えたり、洞察を求めたりということはせず、身体の感覚に注意を向け続けていきます。そうすることで、まず身体(生理反応)が変わり、結果としてものの考え方や感じ方、行動も変化します。 ピーター・ラヴィーン博士は、野生の餌動物(たとえばシカなどの草食動物)は、捕食動物(たとえばライオンのような肉食動物)から日々命をねらわれ、襲われているにもかかわらず、なぜ深刻なトラウマの犠牲にならずにすん でいるのか、という問いから研究を始めました。 そして、25年以上に及ぶ研究の結果、 次のようなことを見出しました。


本来、動物は、危機に直面した際、

(1)逃げる
(2)戦う
(3)硬直する

 のいずれかの行動を取ります。


 逃げるときも戦うときも、人間(動物)の神経系はフルスピードで回転しています。

 硬直 しているときも、一見何も起きていないように見えますが、実は体内では同じように神経系が全速力で活動を行い、膨大な量のエネルギーを作り出しているのです。

 

 圧倒的な脅威に対しては逃げられるときは逃げますし、逃げ場がないときには戦うことも ありますが、その両方ともがうまく行かなかった場合は、凍りつく(硬直する)というパ ターンを取ります。

 

 硬直は、万が一逃げ切れなかった場合に、その瞬間の苦痛を感じずにすむというメリット があります。交通事故に遭った人が、事故の瞬間を覚えていなかったり、子ども時代の性的虐待の犠牲者が、その出来事を覚えていなかったりするのはよくあることです。


 これは、生物にとって、意識が身体にとどまっているのがあまりに衝撃が強く危険な場合、苦痛を避けるために自動的に肉体から感覚を切り離した状態、「解離(かいり)」の 状態になることがあるからです。


 野生動物の場合なら、硬直(死んだふり)をすることで、捕食動物が隙を見せる場合があり、その隙を突いて逃げ出すことができます。また、捕食動物によっては、動いている獲物しか狙わないという本能があるため、硬直した相手を追うのをやめることもあります。 それで敵が立ち去れば、襲われた動物は硬直状態を解き、身震いして過剰なエネルギーを振り落とし、自由に動ける状態にまで回復していきます。このプロセスを自然に行うことで、動物は身に起こる脅威や危険を「トラウマ」として抱えずにすむことが出来るので す。これは原始的な脳による、本能に基づいた行動です。


 以下、youtubeで、白熊が凍りつき状態から自然体に戻るビデオです。

    Polar Bear Not Getting Traumatized
    https://youtu.be/lHVNUDPMeSY

         
 しかし、人間の場合は、あまりに発達した脳の知的部分(大脳新皮質)が意味づけや理由付け、不都合な体験の抑圧を行ってしまうことがあるため、本来動物が持っている自然で 本能的な「エネルギーの解放」の反応が起こりません。したがって、過剰に喚起されたエ ネルギーは「硬直(凍りつき)」が起こったままの状態で行き場を失い、神経系の中で解放されずに蓄積されたままになってしまいます。リヴァイン博士は、この、行き場を失っ て蓄積された過剰なエネルギーが、トラウマに起因する色々な症状を作り出していると考えました。

           人間の脳の本能をつかさどる部分は、他の生物、原始時代の状態の脳とほぼ同じままです。原始時代の

           人間は、常に危険にさらされていました。そのため、危機に際してはエネ ルギーを全力で放出して危

           険に対処するよう、人間の脳と身体はいまでプログラムされ ているのです。


           しかし、このエネルギーを一気に解放することは大きなリスクを伴うことが多く、そうした治療法の多

           くには効果があまりないことが明らかになっています。

 

 

 

 これまでのトラウマ治療は、主に心理面からのみ語られ、身体面からはほとんど語られる ことがありませんでした。


 伝統的なトラウマの治療法である  薬物療法(トラウマの症状の原因となる脳や神経系の過剰な活動を薬で抑える)  カタルシス療法(トラウマに関連した激しい感情的追体験をすることでトラウマの解放をこころみる)  認知行動療法(偏ってしまった考え方、行動を修正していく)などがありますが、いずれもトラウマ治療に関しては長期的な効果があまり見られないと 言われています。


 したがって、この過剰エネルギーを自然な方法で、少しずつゆっくりと解放させていくこ とがトラウマ治療のポイントといえます。これに関して、Levine博士は、「癒しのプロセ スは、劇的でなければないほど、またゆっくりと起これば起こるほどより効果的である」 と述べています。


 Levine博士が開発したSETM療法は、人間が本来の動物と同じ様に持っている「身体感覚」を主に使った、まったく新しいタイプのトラウマの治療メソッドです。

 

 ここでは、神経系がトラウマによって抱えた過剰なエネルギーのゆっくりとした解放を目 指しているため、トラウマやその体験について「言葉で」語ることは重視されません。身 体の状態を感じ、それに呼応して身体が自然に反応し、身体が少しずつエネルギーを解放 していくことが重要で、これが従来の治療法と違う画期的な点です。
 トラウマや、そこから生じる様々な症状は複雑で捕らえにくく、終わりのない苦しみのよ うに感じられることも多いですが、本来は決してそうではないのです。時には時間がかかっていくとしても、トラウマは、どんなに重く苦しいものであっても、少しずつ変わっ ていくことが可能であるものだと、この治療法は教えてくれます。  

 

 そして、大きなトラウマをくぐり抜け、癒し、より良い自分につながっていくという経 験は、その人にとって何ものにも代えがたい財産になることでしょう。

 


(参考:ピーター・リヴァイン著、藤原千枝子訳「心と身体をつなぐトラウマ・セラピー」 雲母書房より)

 

<トラウマはエネルギーである>

 トラウマ症状は、事件そのものが起こすのではなく、未解決で未放出の凍りついた残余エネルギーから 生じるものです。
 野生動物の餌を求める狩りの場面を想像してみてください。

 

 

 

 

 


 

 

 

 チーターが野生のインパラを追います。  この時、インパラの神経系内部を流れるエネルギーは、  時速110キロもの速さで蓄積されています。  チーターが襲いかかり、インパラは倒れます。  インパラは身動きせず、死んだ様に見えますが、  内部では、インパラの神経系は今なお時速110キロのスピードで猛回転中です。  そう、インパラは完全に静止していますが、  体内では、車のアクセルとブレーキを同時に踏み込んだ状態です。  内部の高速回転する神経系(エンジン)と、外部の身体硬直(ブレーキ)は、身体内に竜巻に似た強い混乱状態を作り出します。
  
 この竜巻状のエネルギーこそが、トラウマ症状を形成する中心です。


 このエネルギーがどれほど強いものかは、危険に直面した時の生き抜くための  総エネルギー動員ともいえます。
この残余エネルギーは、自然に消えていくものではなく、身体に残り、しばしば不安、  うつ、心身症、問題行動など広範囲にわた流症状を作り出します。
 これらの症状は、行き場のない未放出のエネルギーを、何とか囲い込むための有機体の  対処法です。
 野生動物は、本能的にすべての圧縮されたエネルギーを放出するため、ほとんど問題  症状を発達させることがありません。
 人間も、野生動物の様に本能的な脳が自然に働き、身体をブルブル震わせてくれたら、  トラウマ症状は作られないのかもしれません。


< トラウマと脳 >

脳の3層構造 
ー昆虫類レベルー
 野生動物の狩りで表現した様に、生きるか死ぬかの危険に直面し
た時に、私たちの本能的な脳(爬虫類脳とも呼ばれる)が活躍します。 この部分は、生存や本能を司る中枢で、闘争、逃走、凍り付きの行動を引き起こし、消化、 生殖、血液循環、呼吸、睡眠に関係する脳です。

ー哺乳類レベルー

 それは、恐怖などを感じる辺縁、中脳(扁桃体)とも密接に結びついています。記憶や 感情、記憶を司る中枢です。

 

ー霊長類レベルー

 最も人間らしく進化した、認知、言語、発話など、社会性、調整、行動を抑制するなど を司どる中枢です。
 従来のトラウマ治療では、大脳皮質系を通してトラウマ解消のアプローチ(言語、意識 的な思考、顕在記憶)を行いました。
 SEは、脳の皮質下領域(身体感覚、無意識の動態、潜在記憶)を活用し、神経系の再調 整を安全にサポートします。

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